はじめに
建設工事の現場では、大きな工事となると、着工から完成・引き渡しまでに数か月、時には1年以上かかることがめずらしくありません。もし工事がすべて終わった後にしか代金を受け取れないとなると、途中で発生する資材費や下請け業者への職人代(人件費)を立て替えるのが大変になり、資金繰りが厳しくなってしまいます。
そこで建設業で広く取り入れられている方法の一つが「出来高請求(出来高払い)」という仕組みです。
この記事では、建設業の個人事業主や一人親方、小規模法人の経営者・事務担当者の方に向けて、出来高請求の基礎知識やメリット、請求書の書き方まで分かりやすく解説します。
出来高請求とは?基礎知識を整理
出来高請求の仕組み
出来高請求とは、工事の進捗状況(どのくらい作業が進んだか)に応じて、完了した部分の代金を途中で請求する仕組みのことです。「出来高(できたか)」とは、工事の達成度のことを指します。
たとえば、契約金額が1,000万円の工事で、当月までに全体工程の30%が完了した場合、その30%分にあたる300万円を請求するという形になります。
一括請求・着手金方式との違い
代金の支払い方法には、出来高請求のほかに「一括請求」や「着手金+完成払い」などの方法があります。
- 一括請求:工事がすべて完了した後に、全体の代金を一度に請求する方法です。工期が数日〜1週間程度の短い小規模工事でよく使われます。
- 着手金・中間金方式:工事開始時に全体の〇%、中間に〇%、完成時に残額といったように、あらかじめ決めた時期・割合で分割請求する方法です。
出来高請求の最大の特徴は、「実際の工事の進み具合(実務の成果)」に合わせて金額を計算して請求点にあります。
着手金などをあらかじめ受け取る未成工事受入金については↓の記事を読んでみてください。
出来高請求を採用するメリット
建設業において出来高請求が選ばれるのには、受注者(元請け・下請け)と発注者の双方に大きなメリットがあるためです。
1. 資金繰り(キャッシュフロー)が安定する
工事の期間が長くなると、毎月の資材購入費や重機のレンタル料、職人さんへの人件費などの支払いが先行して発生します。出来高請求を使えば、毎月・あるいは区切りごとに工事の進捗に応じた現金が入金されるため、大幅な持ち出しを防ぎ、資金繰りを安定させることができます。
2. 未回収リスクを減らせる
万が一、工事の途中で発注者や元請け企業の経営状況が悪化した場合でも、すでに施工を終えた部分の代金を細かく回収できていれば、損害を最小限に抑えることができます。
出来高請求の注意点とデメリット
メリットの多い出来高請求ですが、運用にあたっては注意すべきポイントもあります。
1. 「出来高査定(進捗の確認)」で揉める可能性がある
出来高請求を行うには、発注者や元請け企業と「今どこまで工事が進んだか」の認識を合わせる必要があります。 受注者側が「40%進んだ」と思って請求しても、元請け側から「チェックしたら30%しか認められない」と修正を求められる(これを出来高査定といいます)ことがあります。認識のズレを防ぐため、日頃から工事写真や作業日報などの根拠をしっかり残しておくことが大切です。
ちなみにうちの会社は今は全て工事完了後の一括請求にしていますが、社長が個人事業主だった頃、お取引先様のうち何件かには工事内容により、出来高請求していたそうです。
特に新築マンションなどの建具や内窓の取付の際に出来高請求していたそうで、その際には工事完了の何%という方法ではなく、建具●枚 内窓●枚 といった感じで1枚単位でその月に完了した分を請求していたそうで特に問題が起こったことはないそうです。
%だとどうしても大体の感じになってしまうので、少し面倒ではありますが、このようにかなり細かい数字で請求すると問題の発生は少ないと思います。
2. 事務作業の手間が増える
一括請求であれば請求書の発行は1回で済みますが、出来高請求の場合は毎月または工程ごとに進捗率を計算し、専用の内訳書や明細書を作成する必要があります。これがかなり面倒だったようですが、社長曰く、これもコツというか、ポイントがあって、見積の段階でざっくり見積しない。
例えば先ほどの建具の件で言いますと、
建具取付 一式 50000円
などというざっくりした感じの見積をせず
建具取付工賃 10枚 × 5000円
のように1つあたりの金額をしっかり示して見積を作っておけばあとは当月完了した数量を数えておけばいいだけの話という事になりますね。
見積書は細かくしっかり作っておくのがポイントです。
出来高請求書の書き方と実務のポイント
出来高請求書を作成する際は、元請け指定の用紙(フォーマット)を使用することが一般的ですが、基本的には以下の要素を記載・計算します。
記載する主な項目
- 全体の工事契約金額(総額)
- 前回までの累計出来高(これまでいくら請求したか)
- 今回出来高(今月新しく進んだ分の金額)
- 今回請求額(今回出来高から保留金などを考慮した金額)
*当月請求後の残高(全体の工事金額の残り)の記載を求められることもあります。
具体例でわかる計算の流れ(%で出来高請求する場合)
【例:総契約金額 500万円の現場】
- 1か月目:進捗率 20%
- 今回出来高= 500万円 × 20% = 100万円(請求)
- 2か月目:進捗率 50%(累計)
- 全体出来高= 500万円 × 50% = 250万円
- 今回出来高= 250万円 - 100万円(1か月目分)= 150万円(請求)
このように、「今回の累積進捗額」から「前回までに請求した額」を差し引くことで、今月支払ってもらうべき金額を算出します。
まとめ:出来高請求を正しく理解して安全な経営を
出来高請求は、長期間にわたる建設工事において、会社や一人親方の資金繰りを守るための大切な仕組みです。
- 工事の進捗率に合わせて分割請求する仕組み
- 先行する資材費や人件費の支払いに対応でき、未回収リスクを減らせる
- 元請けとの進捗認識のズレを防ぐため、写真や日報などの根拠を残すことが重要
毎月の出来高査定や明細作成には少し手間がかかりますが、仕組みを正しく理解して活用し、無理のない健全な現場運営を目指しましょう。


