建設業の経理を担当していると、聞きなれない専門用語がたくさん出てきますよね。
その代表格とも言えるのが「未成工事支出金(みせいこうじししゅつきん)」です。
「名前が漢字ばかりで難しそう…」 「一般企業で使う勘定科目と何が違うの?」
とお悩みの方も多いのではないでしょうか。
今回は、建設業の個人事業主や小規模法人の経営者・事務担当者の方に向けて、未成工事支出金の意味や基本的な仕訳方法、間違えやすいポイントを分かりやすく解説します!
1. 未成工事支出金(みせいこうじししゅつきん)とは?
未成工事支出金の読み方は「みせいこうじししゅつきん」です。一言でいうと「まだ完成して引き渡していない工事のために、先払いで発生した費用」のことです。これって普通にあることですよね。というか、ほとんどがそうではないか?と思うほどではないでしょうか。だって材料なんてまずなければ工事をできませんからね。完了してから買うなんてことは不可能です。
一般的な製造業や小売業の会計で使われる「仕掛品(しかかりひん)」や「仕掛品原価」にあたるもので、建設業専門の勘定科目として使われます。
なぜこんな勘定科目が必要なの?
建設業の工事は、着工から完成・引き渡しまでに数ヶ月〜数年といった長い期間がかかることが珍しくありません。
会計の世界には「費用収益対応の原則」というルールがあります。これは「売上が立ったタイミングで、それにかかった費用をセットで計上する」という原則です。
- 工事が完成して引き渡したとき ➔ 売上(完成工事高)を計上する
- 工事がまだ完成していないとき ➔ 費用(完成工事原価)として落とすことはできない
そのため、工事が途中の段階で支払った「材料費」「外注費」「人工代(人件費)」などは、一時的に資産(未成工事支出金)としてプール(保管)しておく必要があります。
2. 未成工事支出金に含まれる「4つのコスト」
工事費用として「未成工事支出金」にまとめられる主なコストは、次の4つです。
- 未成工事材料費: 木材、鉄骨、塗料など工事用に仕入れた材料代
- 未成工事労務費: 自社職人さんなどの人件費や給料
- 未成工事外注費: 下請け業者や一人親方に支払った外注費
- 未成工事経費: 重機のレンタル代、現場への交通費、現場の水道光熱費など
これら「特定の工事のためにかかった費用」で、まだその工事が完成していない場合の支出はすべて未成工事支出金として処理します。
3. 具体的な仕訳の流れ(例)
未成工事支出金を使った実際の経理処理の流れを、例をあげて見ていきましょう。
パターン1:未完成の工事のために外注費30万円を支払った
工事が途中の段階で下請け業者へ外注費を支払った場合、その時点では経費(完成工事原価)ではなく「未成工事支出金」として計上します。
- 借方:未成工事支出金 300,000円 / 貸方:普通預金 300,000円
パターン2:工事が完成して引き渡した(決算・引渡時)
工事が完成し、施主(元請)へ引き渡したタイミングで、それまで溜めていた未成工事支出金を「完成工事原価」へ振り替えます。
- 借方:完成工事原価 300,000円 / 貸方:未成工事支出金 300,000円
このように処理することで、「工事が完成して売上(完成工事高)が発生したタイミング」と「それまでにかかった費用(完成工事原価)」がぴったり対応するようになります。
4. 経理で気をつけるべき2つの注意点
① どの工事にかかった費用か(現場別)管理する
未成工事支出金は、すべての工事をごちゃ混ぜにしてしまうと「どの現場でいくら使ったか」が分からなくなってしまいます。
会計ソフトに入力する際は、必ず「A様邸新築工事」「Bビル改修工事」のように工事ごとの補助科目(現場コードなど)を設定して紐付けておきましょう。うちの会社の場合は見積書No.で紐づけるようにしています。
② 決算跨ぎの棚卸し(決算時のチェック)
期末(決算日)の時点で、まだ引き渡していない現場の費用が「完成工事原価」に混ざっていないかチェックが必要です。
もし誤ってまだ完成していない現場の費用を経費に落としてしまっていると、利益が実際より少なく計算されてしまい、税務調査で指摘を受ける原因になります。決算時には必ず「未完成の現場の費用=未成工事支出金」に残っているかを確認しましょう。
また、未成工事支出金でなんて仕分けしてないよ!!消耗品費で仕分けしちゃっているよ!!という方も結構多いはずです。(うちも普段は消耗品費で仕訳しています)その場合どうしたらよいかは別の記事で解説しています。
まとめ
未成工事支出金は、建設業ならではの会計ルールを支える大切な勘定科目です。
- 未成工事支出金=まだ完成していない工事のための「先払い費用」(資産)
- 工事が完成・引き渡されたら「完成工事原価」(費用)に振り替える
この基本の流れさえ押さえておけば大丈夫です!
現場ごとにしっかり費用を分類しながら、日々の帳簿付けを進めていきましょう。

