「仕事が増えてきたから、そろそろ従業員を雇おうかな。」
建設業では、このタイミングが訪れる一人親方は少なくありません。
でも実は、従業員を雇うと「一人親方」のままではいられなくなるケースがほとんどです。そりゃそうですよね「一人」ではなくなるわけですから。
「何を届け出ればいいの?」
「今までと何が変わるの?」
「保険はどうなる?」
そんな疑問を持つ方も多いでしょう。
今回は、一人親方が従業員を雇ったときに必要となる手続きを、順番にわかりやすく解説します。
一人親方ではなくなるってどういうこと?
一人親方とは、その名のとおり従業員を雇わず、自分一人で仕事を請け負っている事業主をいいます。一人親方について詳しくは
一人親方とは の記事を読んでみてください
従業員を雇って継続的に働いてもらうようになると、多くの場合は一人親方ではなくなります。
もちろん、家族がたまに手伝う程度や、一時的に応援をお願いするだけなら事情は異なりますが、常用の従業員を雇う場合は各種手続きが必要になります。
「人を雇っただけ」と思っていると、後から手続き漏れが見つかることもあるので注意しましょう。
まず確認したいのは労災保険
一人親方として特別加入していた場合、従業員を雇うことで状況が変わります。
従業員には労災保険が必要になるため、労働保険の成立手続きを行います。一人でも従業員を雇ったら必要な手続きです!!
また、一人親方の特別加入についても、そのまま継続できるケースと手続きが必要になるケースがあります。加入している一人親方団体へ早めに相談すると安心です。
一人親方の労災・特別加入については
一人親方の労災・特別加入とは? の記事を読んでみてください。
雇用保険の加入手続き
従業員が次のような条件を満たす場合は、雇用保険への加入が必要になります。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上
- 31日以上雇用する見込みがある
条件に該当する場合は、ハローワークで雇用保険の手続きを行います。
アルバイトだから加入しなくていいと思っていたら、実は加入対象だったというケースも意外とあります。
雇用条件はしっかり確認しておきましょう。
社会保険は加入が必要?
ここは少しややこしいところです。
個人事業の場合、建設業など多くの業種では、常時5人以上の従業員を使用する事業所になると、原則として健康保険・厚生年金への加入義務が発生します。
一方で、従業員が1人や2人であれば、必ずしも加入義務があるとは限りません。
ただし、法人の場合は従業員数に関係なく原則加入となります。
会社の形態によって変わるため、判断に迷う場合は年金事務所へ確認するのがおすすめです。また、加入要件も年々変わっているので必ず最新情報を確認してください。
労働保険の年度更新も始まる
一人親方だった頃は関係なかった手続きが増えます。
その代表が労働保険の年度更新です。
毎年6月から7月頃に、その年度の概算保険料と前年度の確定保険料を申告・納付します。
建設業では、一括有期事業や単独有期事業などが関係することもあるため、事業内容によって手続きが変わります。一人親方から一人従業員を雇うことになったという時点では、単独有期事業に当てはまることはほぼないのではないかと思いますので、一括有期事業で申告をする方がほとんどかと思います。
労働保険一括有期事業の申告の流れについては
建設業の労働保険年度更新の流れ|一括有期事業の作業スケジュール の記事を読んでみてください。
一人親方でなくなっても、特別加入で労災に加入し続けることができる場合は事務組合の方で手続きを行ってくれると思いますので指示に従いましょう。
給与を支払うなら税金の手続きも
従業員へ給与を支払う場合は(もちろん支払うと思いますが)所得税の源泉徴収も始まります。
すでに開業時に「給与支払事務所等の開設届」を提出している方もいますが、まだ提出していない場合は税務署への届出が必要です。
また、
- 給与計算
- 年末調整
- 源泉徴収票の作成
など、毎月・毎年行う業務も増えてきます。
最初は難しく感じますが、会計ソフトや給与ソフトを利用するとかなり負担を減らせます。
建設業だからこそ気を付けたいこと
建設業では、元請会社から
「社会保険加入状況」
「労災加入状況」
「雇用保険加入状況」
などを確認されることがあります。
従業員を雇ったにもかかわらず必要な手続きをしていないと、現場への入場や取引に影響するケースもあります。
「あとでやろう」と思わず、人を雇うことが決まった時点で準備を始めるのがおすすめです。きちんと手続きをすることで、従業員さんも安心して働くことができます。
手続きチェックリスト
従業員を雇ったら、次の手続きを確認しましょう。
- 労災保険の成立手続き
- 一人親方特別加入の見直し
- 雇用保険の加入手続き(対象者のみ)
- 社会保険の加入要件の確認
- 給与支払に関する税務署への届出
- 給与計算・年末調整の準備
- 労働保険年度更新への対応
最初はやることが多く感じますが、一つずつ確認すればそれほど難しいものではありません。
まとめ
一人親方から従業員を雇う事業者へ変わるタイミングは、事業が成長した証でもあります。
その一方で、これまで不要だった保険や税金の手続きが一気に増えるため、準備不足だと後から慌てることになりがちです。
「人を雇ったら終わり」ではなく、「人を雇ったら新しいスタート」と考えると分かりやすいかもしれません。
この記事をチェックリスト代わりに、必要な手続きを一つずつ進めていきましょう。

