「事業用口座から、今月の生活費を引き出したけれど、経費ではないしどう記帳すればいいのだろう?」 疑問に思いますよね。
個人事業主として独立したばかりの一人親方や、事務を担当されているご家族にとって、日々の帳簿づけは悩みの種になりやすいものです。
前回の記事では、個人の財布から事業の支払いをした時に使う「事業主借」について解説しました。今回は、その逆の動きである「事業主貸(じぎょうぬしかし)」について解説します。
専門用語はなるべく使わず、実務に沿った具体例を交えながら順を追って説明しますので、ぜひ最後まで目を通してみてください。
事業主借については↓の記事を読んでみてください。
結論:事業主貸とは「事業のお金をプライベートのために使った時」に使う科目
結論から申し上げますと、事業主貸(じぎょうぬしかし)とは、「仕事(事業)のお金を、プライベート(個人)のために使った時」に使う勘定科目です。
言葉の通り、「事業(仕事用の財布)」が「事業主(プライベートのあなた)」へ「お金を貸した(貸)」とイメージすると、意味がスッと入ってきやすくなります。
個人事業主は、事業で得た利益がそのまま個人の収入(生活費)に直結します。そのため、事業用の銀行口座から生活費を引き出したり、個人の支払いをしたりすることは日常的に発生します。
しかし、生活費は事業の「経費」にはできません。そこで、「これは経費ではなく、事業主個人にお金を渡しただけですよ」と帳簿上で明確に区別するために、この「事業主貸」という専用の科目が用意されているのです。
建設業の実務でよくある!「事業主貸」を使う3つの具体例
言葉の定義だけではイメージしづらい部分もあるかと思います。 ここでは、建設業の現場や事務作業の中でよく発生する「事業主貸」の具体例を3つご紹介します。
1. 事業用口座から「生活費」を引き出したとき
最も頻繁に発生するのがこのケースです。 元請けから工事代金が振り込まれた後、事業用口座からご自身の生活費として現金を引き出したり、プライベート用の口座へ資金を移動させたりした場合です。事業のお金が個人の生活費に回ったため、「事業主貸」で処理をします。
2. 「個人の税金や保険料」を事業用口座から支払ったとき
国民健康保険料、国民年金、個人の所得税や住民税などは、あくまで「個人」が支払うべきものです。 これらを事業用の通帳から口座振替で支払ったり、事業用の現金で納付したりした場合、事業の経費(租税公課など)にはできません。そのため、「事業が個人へ支払いを立て替えて貸した」と考え、事業主貸として処理します。
3. 個人の支出が含まれる「携帯電話代」を事業用口座から払ったとき
仕事とプライベートの両方で使っているスマートフォンの料金を、事業用口座から支払っている場合があるかと思います。 たとえば、毎月の料金の50%を事業の経費(通信費)、残りの50%をプライベートの利用とする場合(これを家事按分と呼びます)、プライベートに該当する50%分は事業主貸として処理します。
「事業主貸」のカンタンな仕訳パターン
それでは、実際に帳簿へ記入する際の「仕訳(しわけ)」を見ていきましょう。よくある2つのパターンをご紹介します。
例①:事業用口座から生活費として30万円を引き出した
生活費を事業用口座(普通預金)から個人の手元へ移した際の仕訳です。
- (借方)事業主貸 300,000円 /(貸方)普通預金 300,000円
右側(貸方)の普通預金が30万円減少し、その理由が左側(借方)の「事業主個人へ渡したお金(事業主貸)」であることが分かります。
例②:個人の国民健康保険料 4万円が、事業用口座から引き落とされた
個人の保険料を事業用口座で支払った場合の仕訳です。
- (借方)事業主貸 40,000円 /(貸方)普通預金 40,000円
繰り返しになりますが、個人の保険料は「法定福利費」などの経費にはならないため、必ず事業主貸で処理するように注意してください。
「事業主借」と「事業主貸」の違いと見分け方
ここで、前回解説した「事業主借」との違いを整理しておきましょう。 どちらの科目を使うか迷った時は、「お金の流れの出発点がどこか」を考えると間違えにくくなります。
- 事業主貸(かし):【事業】から【個人】へお金が動いた時 (例:事業口座から生活費を引き出した)= 事業が個人に貸した
- 事業主借(かり):【個人】から【事業】へお金が動いた時 (例:個人の財布で現場の材料費を払った)= 事業が個人から借りた
まとめ:お金の動きを正しく記録して、正確な帳簿づくりを
今回は、「事業主貸」の意味や使い方について解説しました。 内容を簡単に振り返ります。
- 事業主貸は「事業のお金を個人のために使った時」に使う
- 生活費の引き出しや、個人の税金の支払いなどが主な具体例
- 経費にはならないため、税金計算(利益)には影響しない
個人事業主である以上、事業とプライベートのお金が混ざってしまうのはある程度仕方のないことです。しかし、それを「事業主貸」「事業主借」を使って正しく仕訳しておくことが、正確な確定申告への第一歩となります。
私個人としては、一人親方や個人事業主であっても、ある程度事業のお金と個人のお金は分けて管理することを強くお勧めします。(間違いが起きにくいからです)
個人口座の他に事業用口座を作っておくだけでだいぶ違います。個人事業ですから、
自分に入ってきたお金を自分で使うだけなのに なんでいちいち口座間のお金の移動やら面倒なことしなきゃならないんだよ。
と思ってしまうかもしれませんが、圧倒的に管理がしやすいです。



